一応、見れるときは見に行く横トリである。
この展覧会、正直がっかりする過去もあったものだ。
今回のディレクターは森村泰昌。
初めての国際展のディレクションとのこと。
まずはメイン会場の横浜美術館から見始める。
意外にもはじめの作品はマレーヴィチやジョン・ケージなど物故作家であった。
普通の現代美術館みたい。
絵画や楽譜などは普通、大型の国際展で見ることはないが
こういった作品により落ち着いて見始めることができる。
こんかいのテーマは「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」
そのタイトルの通り、会場のところどころにあるキャプションに
どのような視点で忘却についてを捉えたのかという作品群についての説明があり、
鑑賞者は常にそのテーマと共に歩む事になる。
グッときたのは
「華氏451の旅
人類の歴史に繰り返し登場する、思想統制という強制的になにものかが抹殺される悲劇。これを冷静に見つめなおす旅。」
ここにはかんらん舎、大谷芳久コレクションの
三好達治や高村光太郎の戦時中に書いた戦意を鼓舞する詩などが展示されている一方、
松本竣介の家族に宛てた私信が展示されている。
当時の時代の要請(ニーズ)に応えたものだろうが前者は今の私には違和感しか感じない詩の数々。
私が就学時代に学んだ三好や高村の詩とは似ても似つかず衝撃を受ける。
後者はいつの時代も変わらない家族のやりとり。
タリン・サイモンの
インスタレーション「死亡宣告された生者、他、全18章の物語」は
ウクライナの児童養護施設の子供たちの写真をはじめとした主題とともに
その見せ方も素晴らしく、作品と共に隠された世界の向こう側を見る思いがした。
(事実は自分が目を閉じているだけなのだが)
また釜ヶ崎芸術大学など忘れられがちな人々が暮らす街を拠点としてアート活動を行っている活動も紹介。
全体として社会性の強い、今、見て感じる必要性を訴える作品が多い印象。
ピエール・モリニエやジョゼフ・コーネルなど内面に向かう傾向の作品も並行してあるのだが
混乱することもなく、楽しむことができた。
どういう仕組みでそう感じるのかは分からないが
やるじゃん森村泰昌というかんじ。
おすすめです。
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