この美術館、以前やった『「オブジェの彼方へ」 変貌する「本」の世界』も見たかったのだが
見逃してしまい、本日に至る。
本来なら逃がした魚は二度と戻らないのだがこの度の展覧会は若干趣旨が似ていると思われ行ってみる。
選ばれているのは国内の息の長い実力派作家中心。
物故作家も若干いるのだが、その内容は充実したもの。
特にここで初めて出会った八木一夫の作品は小さいながらに素晴らしく、
最近までこんな作家いたんだなあ。。とうれしくなる。
その他、心に残った作家は
荒木高子、河口龍夫、三島喜美代、西村陽平、村岡三郎、渡辺英司。
遠藤利克はいつものようにどかーんとした迫力を期待していたのだがスペースの問題か、こじんまりしており
勝ったのはにおいか(タールのにおいが作品の周りに充満)?
河口龍夫は定番作品の出品となったが青い広辞苑に穴を開け、蜜蝋でくるんだものに水を満たした
「言葉の中の水」がとてもロマンティックで思わずにっこり。
西村陽平、くしゃっとしたポケットティッシュにしか見えないぞ!と思うがそれは窯で焼いた本。
沢山ならぶと「作家性とは…」とか考えるのはしちめんどくさくなり
あまりのかわいらしさにこれも思わずにっこり。
それを所蔵しているうらわ美術館にも好感を抱く。
-2011/1/23
うらわ美術館「これは本ではない-ブック・アートの広がり」
解剖図や大変美しい義足からハーストの近作まで幅広いセレクトの展覧会である。
これは企画が大変そうだなー
象牙でできた、解剖人形が超チャーミングで珍しく所有欲が芽生える。
記憶に残ったのはこちら
ヴァルター・シェルス「ライフ・ビフォア・デス」
おそらくこれにインパクトを受けた人は多いのではないだろうか。
一般の人の亡くなる前の姿と亡くなった直後の姿の写真を並べたもの、
そしてその人がどんな人物だったかを説明するテキストで出来ている。
単純な作品だが、片方の写真、あるいは片方テーマに注目する作品とは
迫ってくるものがまるで違い、感情が揺さぶられる。
そういう意味で最小のアイテムで最大の効果を引き出すことに成功していると思う。
ブラザース・クエイ「ファントム・ミュージアム」
サー・ヘンリー・ウエルカムの(たしか依頼で作ったと書いてあったような)コレクションである
人体模型や医学道具を使ったショートムービー。
久しぶりにブラザース・クエイの映像を見れて嬉しい気持ちもあるが、
今回の展示で見ることができたかわいいオブジェ達もいきいきと活躍しており完成度高し。
ステラーク「腕にある耳」
この作家以外に蛍光色に光るウサギを作ったという作家も紹介されていたが
発表時に論議をかもしたらしく記録のみ紹介されていた。
私も個人的には他者の命そのものを作品化するのはNGだと考えるが
傾向としては似ているものの、自らの腕に耳を培養するという
この体を張ったこの作家には一票入れてもいいかなと。
また、頭蓋骨を削って作るというタブローが紹介されていたが、
これは見ること自体が大変重く感じられるとともに、自分の中での位置付けに困っている。
-2010/2/28
森美術館
医学と芸術展
http://www.mori.art.museum/contents/medicine/index.html
ケントリッジといえば1999年ベネチア・ビエンナーレで見て
アン・ハミルトンと共に最も記憶に残った美術家の一人。
南アフリカ出身で日本では初めての展覧会。
ドローイングを描き、コマ撮りし、それを消してまた描くという
思い切った手法をとり、アニメーションを作った作家である。
南アフリカ出身作家といえばロビン・ロードといい、
アナログ手法を逆手に取ったような傾向を感じるが
これは紹介する側の問題だろうな。
まあとにかく力があります。
だがビエンナーレで見たアニメーションが1点ものだったせいもあるが
一度に沢山のアニメーションを見るのは
見るほうも力が要るのです。
展示の前半は政治的テーマと自我にみちみちたアニメーション、
後半はカメラオブスキュラなど、視覚的手法に興味が移ったような作品が増えてきますが
個人的には前半のベタベタな「この世の悩み」的なアニメーションに妙なリアリティを感じて惹きつけられます。
ドローイングも美しい。
デブでハゲなウィリアムのハダカがまたもやラブリー。
2010年1月2日(土)~2月14日(日)
東京国立近代美術館
ウィリアム・ケントリッジ 歩きながら歴史を考える そしてドローイングは動き始めた……
http://www.momat.go.jp/Honkan/william_kentridge/index.html
といっても本日で終了する展覧会なのですが。
既にテレビで放映されたこともあり、カタログも売り切れだそうである。
土日はチケット売り場が30分待ちとのことだが。
近所に住む絵描き友達と平日の午後早い時間に会場に。1室目には数名のお客さんが。
友人によると「とても混んでいる」とのことである。
フロアは概ね3つに分かれており、
1つめは美術館のショーケースをそのまま使った展示で窓はなく、照明は作品の豆電球のみ。
ショーケースに反射して密やかで幻想的な空間を作る。
ショーケースの中を歩くこともできるようになっており、そこではショーケースの中のものと外にあるものと
ガラスの反射が視覚的に交錯しており、しかもモノが全て小さな、透明なモノなので個人的で不思議な空間を感じることが出来る。
二つ目は窓からの自然光のみ。青系のプリント布が全体に敷かれてあり
その上にはとても小さな文字がプリントされた手のひらくらいの紙が重なってある。
三つ目は外の吹き抜けにリボンをつるしたものと、天井につるした透明無色ビーズの紐と、床に置いたジャム瓶に入った水。
何が言いたいかというと、
我々が「はっきり見たい」と思って電気をつけたりすることにより
損なわれてしまうようなものに気付くことができるように作られた展示空間、ということだ。
しかしこういうインスタレーションがある中、絵画の役割はどこにあるのでしょうかね。
瓶には水が入っているが、傍にこぼれた跡がある。「毎朝注ぎ足すときにこぼれたのかな」と思う。
鎌倉館を出て、葉山館のイタリア在住の日本人彫刻家の展覧会(詳細省く)を見て
再び夕方、舞い戻り、池に面したベンチに座って
池の上につるされたビーズ紐を見ながらあんドーナツとペットボトルのお茶を飲む。
夕方の光で見ると二つ目の空間がとても違う。
昼は布だったが夕方には海原のように見える。
三つ目のリボンは透明っぽいので昼の光があたったほうがきれいに感じられた。
そのリボンを見ながら歩いているうちに、なんと足元の瓶を蹴りたおしてしまう。
「すすすすみません!!!!」と言うと「いいんです、大丈夫です」と監視員の人は言ってくれたが
破損がないという事実よりも、日常行為を持ち込んで展示空間を破壊したことに深く落ち込む。
よろよろと一室目に戻り、友人に「おら、とんでもないことしただ」と告白すると
「ああ、それで昼も水がこぼれてたんだ。たしか水のポットもおいてあったもんね」と慰めてくれる。
しかし一人になりたくなくなったので友人にくっついて二つ目の布の部屋に戻ると
監視員の人が友人に声をかけている。地元の友達かと思い、会釈して美術館を出たところ
バイト先の病院の顧客とのことである。
「看護婦さんって言われた…絵で食えないからバイトしてるのに、美術館でも看護婦さんか…」
と友人も落ち込んでしまった。しかも看護婦さんじゃないし。
-2010/1/24
神奈川県立近代美術館
内藤礼
「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2009/naito/index.html
友人の誘いで絵の具メーカー「クサカベ」の工場見学へ。
クサカベは、油と水彩絵の具として有名なメーカーなのだが、
電車で見に行ける距離に工場がある。
誘ってくれた友人は普段、日本画絵の具を使っているが、
最近絵の具の原料を調べることに凝っていて、
原料は日本画の絵の具でも共通項が多く、
そのため友人の個展にたまたま用事で訪れたクサカベの人を質問攻めにしてしまい
「そんなに知りたいなら工場見学に来てください」と言われたとのことであった。
和光市の住宅地にぽつんとある小さな工場では十数名が働いている。
思ったより小規模だが、他に2つ工場があるらしい。
出迎えてくれた人は友人が質問責めにしたおじさんで蓋を開けてみれば副社長であった。
「勉強熱心な作家さんなのでちゃんと案内するように」とのお達しで
(私は別に熱心じゃないのだが)技術開発の人が案内してくださる。
この工場では開発と生産を行っている。
絵の具がどのようにできるかを簡単に言えば
顔料屋から仕入れた顔料を
アラビアゴムや、オイルなど異なるメディウムと混ぜることにより
水彩絵の具(アラピアゴム)や油絵の具(オイル)となるのである。
生産量は水彩と油で言えば圧倒的に油絵の具のほうが多く、
機械は同じものを使うそうだが、油絵の具の生産に使う割合が高いそうである。
私たちの訪れた日にはやはり油絵の具を作っていた。
工場での大まかな工程としてはこんなかんじ。
(1)メディウムの調合、顔料の調合
(2)調合された顔料とメディウムを練りこむ
(3)練った絵の具の粒子を揃える
(4)品質検査 色味や粘りや粒子
(5)チューブに入れる
(6)ラベルを貼る、製品番号を印字する
(7)箱詰め、出荷
工場見学の後、どのような絵の具が作るのが難しくて
どのような絵の具の退色が激しいのか、
素材はどの国で生産しているのか等、質疑応答形式で教えてもらう。
それらの話の中から、私の場合、薄々気付いていた課題が明らかになる(ううう)。
最後に実習でウルトラマリンブルーの水彩絵の具を作ってお土産に貰って帰る。
これら全部で4時間の案内であった。
クサカベさん、どうもありがとう。
最後に1:クサカベでは近年「アキーラ」というなかなか乾かない絵の具を開発したとのこと。
アクリルとも水彩とも油絵の具とも違うんだそうですが
聞いたかんじでは油の代替と位置付けたほうがよさそう。
臭くない油というか。ご興味のある方はお試しあれ。
最後に2:日本画絵の具は京都でしか見ることが出来なさそうな印象で私は未だ見たことがない。
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